【労働安全衛生法】製造業における元方事業者が実施すべき事項まとめ

製造業においても、建設業と同様に同一事業場内に複数の関係請負人が混在する形態が増加し、異なった事業者が混在することによる連携の不十分さから安全衛生の点で問題が生じることがあり、これを背景とした労働災害が発生している状況にあります。

一方、製造業における請負による作業については、建設業と比較して、①関係請負人の入れ替わりが少ない、②作業内容及び現場の変化が少ない、③関係請負人の数及び重層度が少ない等の特徴があります。

このような状況を踏まえ、労働安全衛生法が改正され、製造業の元方事業者に作業間の連絡調整の実施等が義務付けられました。また、それに加え、製造業においても元方事業者が関係請負人も含めた事業場全体にわたる「総合的な安全衛生管理」を確立することが重要であることから「製造業(造船業を除く。)における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」が示されています。

この指針に基づき、製造業の元方事業者が実施すべき事項をまとめました。

製造業の元方事業者が実施すべき事項

製造業の元方事業者は、以下の事項を実施する必要があります。

1.総合的な安全衛生管理のための体制の確立及び計画的な実施
2.作業間の連絡調整の実施
3.関係請負人との協議を行う場の設置及び運営
4.作業場所の巡視
5.関係請負人が実施する安全衛生教育に対する指導援助
6.クレーン等の運転についての合図の統一等
7.元方事業者による関係請負人の把握等
8.機械等を使用させて作業を行わせる場合の措置
9.危険性及び有害性等の情報の提供
10.作業環境管理
11.健康管理
12.その他請負に伴う実施事項

総合的な安全衛生管理のための体制の確立及び計画的な実施

(1)作業間の連絡調整等を統括管理する者の選任等
元方事業者は、総合的な安全衛生管理の体制を確立するため、元方事業者の事業場全体の労働者の数が常時50人以上である場合は、作業間の連絡調整等を統括管理する者を選任し、当該事項を統括管理させる必要があります。

(2)安全衛生に関する計画の作成及び実施
元方事業者は、労働災害防止対策として実施すべき主要な事項(関係請負人に対して実施する事項を含む。)を定めた安全衛生に関する計画(以下「安全衛生計画」という。)を作成し、関係請負人に周知させること。また、安全衛生計画に沿って労働災害防止対策を実施する必要があります。

作業間の連絡調整の実施

元方事業者は、混在作業による労働災害を防止するため、随時、元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における作業間の連絡及び調整を行う必要があります。

作業間の連絡調整の具体的な実施は、作業発注時にあらかじめ作業指示書に具体的な実施事項を記載した上で関係請負人に通知したり、現場における作業開始前の打合せにおいて関係請負人に指示する等の方法で実施します。

関係請負人との協議を行う場の設置及び運営

元方事業者は、関係請負人との間において必要な情報を共有し、共通認識を持つことが混在作業による労働災害防止に当たって有効であることから、関係請負人の数が少ない場合を除き、関係請負人と協議を行う場(以下「協議会」という。)を設置し、定期的に開催するとともに、その使用する労働者に協議会における協議結果を周知させる必要があります。

また、機械等を導入し、又は変更したとき、元方事業者又は関係請負人の作業内容を大幅に変更したとき、関係請負人が入れ替わったとき等混在作業による労働災害の防止のために協議すべき必要が生じたときにも協議会を開催する必要があります。

作業場所の巡視

元方事業者は、連絡調整の実施状況等現場の状況を確認することが混在作業による労働災害の防止に当たって有効であることから、定期的に、混在作業による労働災害を防止するため必要な範囲について作業場所を巡視しなければいけません。

また、機械等を導入し、又は変更したとき、元方事業者又は関係請負人の作業内容を大幅に変更したとき、関係請負人が入れ替わったとき等においても同様に巡視する必要があります。

関係請負人が実施する安全衛生教育に対する指導援助

元方事業者は、必要に応じ、関係請負人が行う労働者の雇入れ時教育、作業内容変更時教育、特別教育等の安全衛生教育について、場所の提供、資料の提供等を行う必要があります。

クレーン等の運転についての合図の統一等

元方事業者は、クレーン等の運転についての合図の統一、事故現場等の標識の統一等、有機溶剤等の容器の集積箇所の統一、警報の統一等を行う必要があります。

元方事業者による関係請負人の把握等

元方事業者は、作業間の連絡調整、協議会の設置運営等の円滑な実施のため、関係請負人に対し、請負契約の成立後速やかに、作業間の連絡調整等を統括管理する元方事業者に属する者との連絡等を行う責任者の選任状況及び安全管理者等の選任状況を通知させ、これを把握しなければなりません。

また、新たに作業を行うこととなった関係請負人に対しては、関係請負人が作業を開始することとなった日以前の作業間の連絡調整の措置、クレーン等の運転についての合図の統一等及び協議会における協議内容のうち、当該関係請負人に係る必要な事項を周知させる必要があります。

関係請負人が防爆構造の電気機械器具、車両系荷役運搬機械、車両系建設機械等労働災害発生のおそれのある機械等を持ち込む場合は、当該関係請負人に、事前に通知させこれを把握しておくとともに、定期自主検査、作業開始前点検等を確実に実施させなければなりません。

機械等を使用させて作業を行わせる場合の措置

元方事業者は、関係請負人に自らが管理権原を有する機械等を使用させて作業を行わせる場合には、当該機械等について、危害防止措置が適切に講じられていることを確認するとともに、当該機械等について危険性や有害性の調査等を実施した場合には、リスク低減措置を実施した後に見込まれる残留リスクなどの情報を当該関係請負人に対して提供する必要があります。

また、当該機械等の定期自主検査、作業開始前点検等を当該関係請負人に確実に実施させるとともに、定期自主検査の結果、作業環境測定結果の評価、労働者の特殊健康診断の結果等により、当該機械等の補修その他の改善措置を講じる必要がある場合は、当該関係請負人に必要な権限を与え改善措置を講じさせるか、又は元方事業者自らが当該関係請負人と協議の上、これを講じなければなりません。

危険性及び有害性等の情報の提供

元方事業者は、化学設備等の改造等の作業における設備の分解又は設備の内部への立入りを関係請負人に行わせる場合には、その作業が開始される前に、当該設備で製造し、取り扱う物の危険性及び有害性等の事項を記載した文書等を作成し、当該関係請負人に交付する必要があります。

作業環境管理

作業環境維持管理のためには、まず作業環境測定を行い、その結果と評価に基づき必要な改善や保護具の着用等の措置をとるように、元方事業者は関係請負人に必要な指導をしなければなりません。

ただし、元方事業者の責任で改善等を行う必要があることもありますので、請負契約に基づき元方事業者がその責任を果たす必要があることが前提になります。

なお、元方事業者の労働者と関係請負人の労働者の作業が同一の場所で行われている場合における作業環境測定については、一の事業者が作業環境測定を行い、その結果を共同利用することとしても差し支えないものであるため、元方事業者が実施した作業環境測定の結果は、当該測定の範囲において作業を行う関係請負人が活用できるものである必要があります。

健康管理

すべての事業者は、その労働者について、各社内での雇入れ時および雇入れ以降の定期的な健康診断を行い、その結果に基づき、必要時は就業制限等の措置を講じる責任があります。しかしながら小規模の関係請負人では、確実に実施されていない可能性もあります。

そこで、元方事業者は、関係請負人に対し、その労働者に対する健康診断と措置の実施を行う責任があることを自覚させる指導をしつつ、元方事業者の健康診断の日程に合わせて健康診断を実施できるようにしたり、健康診断機関を斡旋したりして、関係請負人が確実に健康診断を実施できるように支援することが望まれます。

その他請負に伴う実施事項

(1)仕事の注文者としての配慮事項
元方事業者は、労働者の危険及び健康障害を防止するための措置を講じる能力がない事業者、必要な安全衛生管理体制を確保することができない事業者等労働災害を防止するための事業者責任を遂行することのできない事業者に仕事を請け負わせてはいけません。

また、元方事業者は、仕事の期日等について安全で衛生的な作業の遂行を損なうおそれのある条件を付さないように配慮する必要があります。このため、元方事業者の組織内における安全衛生管理部門並びに設計部門及び作業発注部門間の連携を図る必要があります。

(2)関係請負人及びその労働者に対する指導等
元方事業者は、関係請負人及びその労働者が法令の規定に違反しないよう必要な指導及び違反していると認められる場合における必要な指示等を行う必要があります。

3)適正な請負
請負とは、当事者の一方が仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約するものであり、注文者と労働者との間に指揮命令関係を生じないものですが、元方事業者と関係請負人の労働者との間に現に指揮命令関係がある場合には、請負形式の契約により仕事が行われていても労働者派遣事業に該当し、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の適用を受けることになります。この場合、元方事業者は、当該労働者について、同法に基づき派遣先事業主として労働安全衛生法上の措置を講じる必要があります。

 まとめ

製造業において、元方事業者と関係請負人である協力会社の様々な取組みにより、安全衛生管理の水準は向上しているものの、まだまだ、重大な労働災害等が発生していいます。

そのため、請負労働者が混在する作業間の連絡調整をはじめとする関係法令で義務付けられた事項の遵守や指針に基づく更なる取組みが必要です。そして、労働災害の防止と事業場の安全衛生管理水準の向上に効果を上げられることを願っています。