建設業や造船業の特定元方事業者とは?特定元方事業者の実施すべき措置まとめ

「元方事業者」とは、1つの場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者のことをいいます。

数段階の請負関係がある場合には、その最も先次の注文者が元方事業となります。元方事業者に該当する条件は、注文者とその請負人の仕事が同一の場所で行われており、注文者自身もその仕事の一部を行っている場合です。

「特定元方事業者」とは、元方事業者のうち、建設業または造船業を行う事業者のことをいいます。

今回は、建設業や造船業の特定元方事業者とは?特定元方事業者の講ずべき措置について解説します。

特定元方事業者とは?

特定元方事業者(とくていもとかたじぎょうしゃ)は、特定事業である建設業、造船業に属する事業の元方事業者(日本の労働安全衛生法第15条第1項の「一の場所」において、請負った仕事の一部を他の請負人に請負わせている事業者(下請負人を使用する元請負人))です。

特定元方事業者の講ずべき措置等

労働安全衛生法には「特定元方事業者の講ずべき措置等」として、

(1)協議組織の設置・運営
(2)作業間の連絡・調整
(3)作業場所巡視
(4)関係請負人が行う安全衛生教育の指導・援助
(5)計画作成と指導
(6)労働災害防止に必要な事項

が規定されています。

協議組織の設置・運営

特定元方事業者は、協議組織の設置及び運営については、次のように定めなければなりません。

1.協議組織の設置
・特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。
・当該協議組織の会議を定期的に開催すること。

2.運営方法
・元方事業者が設置・運営する労働災害防止協議会等の協議組織については、次によりその活性化を図ること。
①協議組織の会議を毎月1回以上開催すること。

②協議組織の構成員に、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、元方事業者の現場職員、元方事業者の店社の店社安全衛生管理者又は工事施工・安全管理の責任者、安全衛生責任者、関係請負人の店社の工事施工・安全管理の責任者、経営幹部、安全衛生推進者等又はこれらに準ずる者を入れること。

③ 会議において取り上げる議題については、次のようなものがあること。
・建設現場の安全衛生管理の基本方針、目標、その他基本的な労働災害防止対策を定めた計画
・月間又は週間の工程計画
・機械設備等の配置計画
・車両系建設機械を用いて作業を行う場合の作業方法
・移動式クレーンを用いて作業を行う場合の作業方法
・労働者の危険及び健康障害を防止するための基本対策
・安全衛生に関する規程
・安全衛生教育の実施計画
・クレーン等の運転についての合図の統一等
・事故現場等の標識の統一等
・有機溶剤等の容器の集積箇所の統一等
・警報の統一等
・避難等の訓練の実施方法等の統一等
・労働災害の原因及び再発防止対策
・労働基準監督官等からの指導に基づく労働者の危険の防止又は健康障害の防止に関する事項
・元方事業者の巡視結果に基づく労働者の危険の防止又は健康障害の防止に関する事項
・その他労働者の危険又は健康障害の防止に関する事項

④ 協議組織の構成員、協議事項、協議組織の会議の開催頻度等を定めた協議組織の規約を作成すること。

⑤ 協議組織の会議の議事で重要なものに係る記録を作成するとともに、これを関係請負人に配布すること。

⑥ 協議組織の会議の結果で重要なものについては、朝礼等を通じてすべての現場労働者に周知すること。

作業間の連絡・調整

特定元方事業者は、作業間の連絡及び調整については、随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整を行なわなければなりません。

元方事業者は、混在作業による労働災害を防止するため、混在作業を開始する前及び日々の安全施工サイクル活動時に次の事項について、混在作業に関連するすべての関係請負人の安全衛生責任者又はこれは準ずる者と十分連絡及び調整を実施することとされています。

作業場所巡視

特定元方事業者は、作業場所の巡視については、毎作業日に少なくとも1回は、これを行なわなければなりません。関係請負人は、特定元方事業者が行なう巡視を拒んだり、妨げたり、忌避してはいけません。

巡視時の確認事項としては、以下の点を特に注意します。

① 連絡・調整事項の実施状況
② 朝礼等における指示事項の実施状況
③ 災害防止協議会の決定事項等の実施状況
④ 建設物、設備又は原材料について、災害防止のための措置に欠陥が無いかを点検する。

関係請負人が行う安全衛生教育の指導・援助

労働者への安全衛生教育の実施に関しては、労働安全衛生法においては、元方事業者であっても関係請負人であっても事業者の義務として規定されています。

関係請負人の労働者への法定教育については、あくまで実施責任は関係請負人にありますが、元方事業者は必要があればこれを指導・援助しなければなりません。特定元方事業者は、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成し、当該機械、設備等を使用する作業に関して関係請負人が講ずべき措置についての指導を行う必要があります。

計画作成と指導

特定元方事業者は、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が労働安全衛生法又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行わなければなりません。

なお、計画については、施工計画書において示されていれば足ります。工程表等には、機械等の搬入、搬出の予定についての計画があることが必要です。関係請負人の講ずべき措置に対する指導については、次に定めるところによります。

① 特定の両系建設機械を使用する作業に関し、関係請負人が定める作業計画を計画に適合するよう指導すること。
② つり上げ荷重が3トン以上の移動式クレーンを使用する作業に関し、クレーン等安全規則の規定に基づき、関係請負人が定める特定の事項が計画に適合するよう指導すること。

労働災害防止に必要な事項

その他、労働災害を防止するために必要な事項について、手段・方法を考えて実施しなければなりません。

まとめ

建設業・造船業では同じ場所で違う会社の労働者が混在して作業するケースが多いため、特定元方事業者には統括管理が義務づけられていいます。労働安全衛生法には、元方事業者の講ずべき措置等」として、関係法令遵守の指導と違反是正の指示、危険防止措置や技術指導が規定されています。

なお、建設業・造船業の特定元方事業者には、さらに統括安全衛生管理の義務があります。建設工事は一般に、元方事業者および関係請負事業者が、同一の場所において仕事を相関連して行うことが極めて多い。このような場合、鳶工事・型枠工事・鉄筋工事など職種の異なる作業者が、同一場所で混在して作業を行うことになります。

この混在作業から生ずる労働災害を防止するための安全衛生管理を「統括管理」といいます。

統括管理を進めるうえで、

・関係請負事業者の職種が異なる作業員が混在することから、業者間の連絡および調整が徹底しない。

 

・元方事業者の作業設備や機械器具類を、複数の関係請負事業者が協同で使用するため、適正な維持管理に問題が生じる。

 

・指揮命令系統の違う関係請負事業者の作業者が混在して作業するため、安全ルール、合図の方法などの安全衛生管理が行き届かない。

等の問題点があります。

職長・安全衛生責任者は、これらのことを留意して統括管理を進める必要があると考えられます。