【徹底解説】士業のマーケティングとは?業界の現状や伸びる事務所の特徴まとめ

中小企業を支援する専門家を増やす国の方針や、経済的な安定を求める志向によって、有資格者は増加の一途を辿っています。

資格を取れば仕事になると考える資格取得希望者もまだまだ多いですが、業務独占の規定が緩くなり、取り扱い業務の範囲が増えたことで、他の士業でも同じ土俵で仕事を取り合うことも起きています。

既に開業されている先生の皆さんは、よくおわかりのことだと思います。それと同時に顧客をどう獲得していくか?いわゆるマーケティングには常々皆さんお悩みかと思います。既存客を持っているベテランから業務を引き継げる事業承継など恵まれた環境である人以外は、自ら顧客開拓をしていく能力が欠かすことができないのが現状です。

資格取得には多くの時間を要します。せっかく頑張って取った資格を無駄にしないためにも、高い集客力や営業力をつけて、顧客を自分で獲得する力を身につけなければなりません。

今回は、【徹底解説】士業のマーケティングとは?業界の現状や伸びる事務所の特徴について解説します。

顧客が減り競合は増える士業の厳しい現状

近年、少子高齢化時代を迎え、中小企業の減少が止まりません。

最近は、社長の平均年齢も高齢化の一途を辿り、事業承継の問題もより深刻化しています。今後はさらに廃業する会社も増加し、ますます中小企業の数は減少するでしょう。つまりは、士業のターゲットとなる顧客の数は年々減少しています。

以下、国内の企業の数については以下を参照ください。

【知っておきたい】国内の会社の数(中小企業、倒産件数、赤字会社、上場企業数)まとめ

顧客数が減少するなか、実は士業の数は年々増えている現状があり、これらは毎年士業のマーケットの競争が激化していくことを示しているといえます。

具体的な士業の数

では実際のところ、士業は毎年どのくらい増えているのでしょうか?

概ね、どの士業も年々増えていますが、特に弁護士や公認会計士は試験制度の変更も影響して、凄まじい勢いで数が増えています。2000年と比較すると、弁護士、公認会計士は2倍以上の数になっており、顧客である中小企業の数が減っている現状では、競争が激化している背景は伺えます。

<登録士業の数(2000年と現在の比較)>

 

弁護士 17,126人 → 38,980人(2017年)
公認会計士 16,656人 → 36,451人(2018年)
税理士 65,144人 → 77,174人(2018年)

さらに近年、AI技術が脚光を浴び、野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究の結果では、今後士業の仕事の大部分がAIに代替されるともいわれています。AI自体は人の仕事を奪わないと論ずる研究者もいますが、士業の増加と企業の減少により、ますます士業の世界で生き残る難しさを感じます。

士業のマーケティングは難しい?

士業が提供するサービスは「無形サービス」に該当します。一般的に「無形サービス」は「有形サービス」よりも販売が難しいといわれています。

実際に士業が提供するサービスレベルは、人によって違いますし、見ただけではそれがいいかどうかわかりません。つまり、契約してみないと品質がわからないのが、顧客の不安になり、士業マーケティングを難しくしている背景もあります。

また、前述したように、「供給過剰」「顧客数の減少」「客単価の下落」による競争の激化があり、より厳しさを増す士業の世界ですが、実はマーケティングが非常に難しいともいわれています。それはなぜなのでしょうか?

仕事を取っている人の特徴は?

まず、士業は、一般の企業と比べ、営業が似合う職種ではありません。

自ら営業することによりブランディングが低下し、その結果、報酬単価の低下にもつながります。また、その延長線上で、あまりやりたくない仕事も引き受けてしまうことになります。またそれ以上に、客が少なくて困っているのなら実力がないのだろうと勘繰られるのも、信用に関わる問題です。

士業は高度専門職と言われるほど、特定の業務分野に特化した存在です。知識経験で勝負するのが正統派であり、専門性を高める努力を脇に置き営業に打ち込むことに、抵抗があります。どちらかというと、顧客獲得の売り込みのうまさではなく、実力で評価されたいと思うのが多くの専門家の心理で、「正直、顧客は増やしたいが営業はしたくない」というのが士業の本音では無いでしょうか。

ではこの時代に上手くやっている士業はどのようにして顧客獲得をしているのでしょうか?

① 強力なチャネルや紹介者がいる

自分で売り込みを行うととブランディングは低下すると考えている士業は多いです。

そのため、直接売り込むよりも顧客の信用がおける知り合いから紹介してもらうほうが、推薦の意味も加えて、契約率は高くなります。多くの仕事をたくさん獲得している士業は、必ず強力なチャネルや紹介者がいます。例えば、他士業、金融機関、公的支援機関などがそれに該当します。

② 事務処理屋ではなく、経営に深く入り込む

士業といえども、クラウド時代においては、定型の事務処理業務はいずれ、自動化の波に飲まれるかもしれません。

それでも仕事を安定して取れる士業は、多くの場合、経営に深く入りこんだ提案をしています。例えば、税理士であれば、単なる会計処理だけでなく、資金調達支援、補助金の提案や税務アドバイスや相続対策などです。弁理士であれば、単なる商標登録ではなく、商品戦略にまで大きく関与することでしょう。

③ 積極的な情報発信・マーケティングをしている

仕事を多数取っている士業ほど、自ら情報発信は積極的に行っています。

例えば、補助金情報や助成金情報、税法の改正や法規制についてなど顧客に役に立つ情報を常に発信している士業は多数存在しています。受任した業務以外に以下に継続して顧問を勝ち取るための付加価値を提案できるかが大切です。

また自社の業務に関連したコンテンツをウェブメディアやブログなどで発信して、顧客獲得を行っています。多くの人は、士業のサービスレベルや業務内容・範囲がわからないため、数々の情報発信とその精度から、士業本人を知り、信用が芽生えるのです。

④ 他との差別化ができている

顧客が減少しているにも関わらず、士業間競争が激化している中で、そこで勝ち上がるためには何が必要なのでしょうか?それは「差別化」です。

もともと士業の差別化は難しいので、一番難しい要素でもあるかもしれません。しかしながら仕事を多数取っている士業は必ずといっていいほど自分を差別化するアピールポイントをもっています。

具体的には、以下のような差別化を検討しましょう。

① 販売地域

自分の活動範囲を明示することにより、エリアに特化する差別化です。例えば渋谷区など、どの地域で主に活動していることを限定的に示すことで、地域密着のPRをします。士業は、その有資格者の数からも、どの地域にも存在しますが、あえて地域を絞ることで絞り込みを行います。顧客目線では、地元の地域に特化しているというのは親近感や信用をもち、時には、すぐに駆けつけてくれるという安心感に繋がります。

② 業界・業種を絞る

例えば「製造業」「介護事業」「人材派遣」」等、業界・業種に特化し、それらの業界において、専門性もふまえた提案が出来る事は、強力な差別化になります。

③ 組み合わせにより特化する

組み合わせを行う事により、よりニッチな市場にリーチすることができます。他とえば、「地域」×「業種」×「得意業務」など、組み合わせて、上手く表現します。ひとつひとつが、士業の業務としては、一般的でも組合わさると差別化のアピールになります。

⑤ セミナーを活用し集客している

士業でビジネスをされる方の入口となる商品の多くは、「セミナーの開催」です。

セミナー開催のメリットは、単に売上につながるだけではなく、セミナーを通して、その道のプロフェッショナルであるという事を見込み客に認識をさせ、自身のブランディングにつながることです。

一般的には、セミナー集客サイトやソーシャルメディア、顧客リストなどを使い集客を行いますが、最近ではストアカやサイタなど、自分のスキルや知識を個人間(C2C)で提供できるスキルシェアサービスが登場し、一般の方でも簡単にセミナー開催が出来るようになりました。

伸びていく事務所に共通する、3つの方向性

また、上記に加え、繁盛している士業事務所は、事務所の方向性が明確です。

士業が目指すべき方向性は、大きく分けて、次の3パターンに分かれます。

① 大規模総合化

業務などは絞らずに、幅広い業務をまんべんなく扱っていくのが、「大規模総合化」の方向性です。ただ、トレンドとしては、「士業業界は、業務分野が細分化されてきている」ということに注意しましょう。

士業の業務分野は、多岐に渡ります。これらを全て少人数の事務所で運営するのは、マンパワーに限界が出てきます。また、広い分野を扱おうとすれば、資金力も分散します。このように、大規模総合化を目指すには、ある程度の規模と資金力がないと難しくなってきています。

資金力がない、小規模の事務所は、「業種特化」「業務特化」を経て、最終的に「大規模総合化」を目指していく戦略を描いてはいかがでしょうか。

② 業種特化型

業種特化とは、「ある業種に専門特化し、その分野でNo.1になる」戦略のことです。

例えば、以下のような業種に特化した事務所が出てきています。

介護

医療

飲食業

美容業

不動産業

上記ように、特定の業種に特化することで、その業界に詳しくなり、業界の慣習やトレンドなどもおさえることができ、専門性の高いコンサルティングを提供できるようになります。

今の時代、他の事務所と同じサービスを提供しているだけでは、選ばれにくいのが現状です。そのため、コンサルティングなどの付加価値が付けられるかどうかで、競争力が大きく変わってくるといえます。

③ 業務特化型

業務特化とは、「ある業務に特化し、その業務でNo.1になる」戦略のことです。

例えば、以下のような業務に特化した事務所が出てきていますよね。

相続

銀行融資の獲得

事業再生やM&A

経理代行

このように、手広くやらずに、あえて業務を絞ることで、特化し、選ばれるようになります。しかし、人気の業務特化もあるため、逆に競争が激化する中に入っていかないよう戦略的に行いましょう。

また、「業務を絞ると、それしか仕事が来なくなってしまうのでは?」と心配される方がいますが、特化するのは、あくまで見せ方を絞るだけであって、他の業務もちゃんと受注できます。強みとしている業務の受任の後に、追加提案という形で顧問契約などを提案すれば良いです。一点突破し水平展開します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

これからの士業の世界はますます競争が激化し、差別化された士業しか勝ち残っていけないでしょう。

その中で、士業は常に顧客に期待に答え続けなければなりません。なぜならば顧客は士業のサービスレベルがわからないからです。顧客の期待値をしっかり把握し、そして期待に答え続けることが今後の士業マーケティングを左右すると私は考えています。