【2019年度より順次施行】行政手続きのオンライン化を目指す「デジタル手続法案」まとめ

日本政府は(2019年)3月15日の閣議で、行政手続きのオンライン化に向けて「デジタル手続き法案」を決定、令和元年(2019年)5月24日、参議院本会議で与党などの賛成多数により、改正戸籍法に続き、いわゆるデジタル手続法も可決・成立しました。

今回は、【2019年度より順次施行】行政手続きのオンライン化を目指す「デジタル手続法案」について解説します。

デジタルファースト法案(デジタル手続き法案)とは?

デジタルファースト法案は「デジタル手続き法案」とも呼ばれており、行政手続きを原則として電子申請に統一するための法案です。

正式名称は「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律案」です。

デジタルファースト法案は、情報通信技術を活用し、行政手続等の利便性の向上や行政運営の簡素化・効率化を図るため、「行政のデジタル化に関する基本原則及び行政手続の原則オンライン化のために必要な事項を定める」とともに、「行政のデジタル化を推進するための個別分野における各種施策を講ずる」ものです。

出典:内閣官房 IT総合戦略室 デジタル⼿続法案について

本法案では、情報通信技術を活用し、行政手続等の利便性の向上や行政運営の簡素化・効率化を図るため、次の3点を基本原則として定めています。

①     デジタルファースト 原則として、個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結する。
②     ワンスオンリー 一度提出した情報は、二度提出することを不要とする。
③     コネクテッド・ワンストップ 民間サービスを含め、複数の手続・サービスがどこからでも/一か所で実現する。

デジタル手続法案は、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が中心となっているもので、「デジタルファースト法案および各省庁デジタル・ガバメント中長期計画」に基づくものです。この法案は業務改革(BPR)の徹底とデジタル化の推進が基本コンセプトとなっていて、具体的にはオンライン化の徹底と添付書類撤廃となっています。

電子政府として成功したエストニアの事例

エストニア共和国は、バルト三国の一つであり、1918年にロシア帝国より独立する形で建国された北ヨーロッパにある共和制の国家である。国土は日本の約9分の1であり、人口は約132万人の国です。

エストニア政府は、e-ID、X-Road、KSIブロックチェーンという3つの技術基盤で電子政府を実現しています。政府が打ち出すこれらの規格に、民間企業が肉付けする形で官民連携したサービスを展開しています。

エストニアでは、現在、行政手続き、公的サービスの99%が電子化され、24時間年中無休で利用でき、行政の窓口に行く必要がありません。

エストニアでは様々な行政サービスが電子化されており国民は、電子ID(日本ではマイナンバーに相当)を活用することで住民情報・医療記録の管理や閲覧・納税・投票など、多くのサービスをオンライン上で利用できる。

その結果、国民の利便性の向上に加えて、行政側もGDPの約2%の大幅なコストの削減を実現しており、これらのサービスは、国民、行政に関する職員、官僚全てが活用しています。

エストニアのe-IDは、日本で言うマイナンバー制度であり、エストニアで受けられる行政サービスのほとんどはe-IDを基準に提供されています。日本のマイナンバーとの違いは、その普及率にあり、日本のマイナンバーカードの普及率が12.4%程度と言われている中、エストニアのe-IDは、15歳以上で同国の永住権を持つ居住者の94%をカバーしています。

また、エストニアでは、子供が生まれると病院側がオンラインで登録手続きが行われます。自動的に出生のタイミングでデジタルIDが付与され、その後、国民側から申請しなくても適切なタイミングで、福祉に関する制度への申込がされ、自動で支援金が受けられる仕組みがあります。また、年金、失業などの申請も自動的に行われています。

どのような手続きがデジタル化されるのか?

デジタル手続法案により、行政手続きを原則「電子申請」に統一することになりました。

具体的には、引っ越しや法人設立などの際、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上で申請できるようにします。併せて2019年度から引っ越しに伴う電気やガス、水道の契約変更を一元化することも決められています。

個人手続きのオンライン化

例えば、インターネットで住民票の移転手続きをとれば、住所などの情報がそのまま転用されるため、電気やガスの契約の際に改めて入力する必要がなくなります。

同時にデジタル化を促すマイナンバーカードの普及にむけ、今まで証明証として活用してきた紙製の「通知カード」を廃止することを政府は決定しています。マイナンバーを連携させるために戸籍法改正案も決定させ、マイナンバーを提示すれば婚姻届の提出、パスポート(旅券)の発給申請、児童扶養手当の請求手続きなどできるようになります。

また、本籍地ではない自治体でも戸籍情報を照会できる、要介護・要支援認定の申請もインターネットで完結させます。さらに将来は、死亡届をネットで届けるだけで、年金事務所への手続が完了し、相続の手続も簡素化されることが予想されます

社会保険・税手続ワンストップサービス

「社会保険・税手続ワンストップサービス」の資料の正式名称は、「企業が行う従業員の社会保険・税手続のオンライン・ワンストップ化等の推進に係る課題の最終整理(案)」です。

従業員の社会保険・税手続のオンライン・ワンストップ化等の推進については、「マイナポータルを通じたオンライン・ワンストップ化」で提出する「フェーズ1」と、「クラウドを活用した提出の実現」する「フェーズ2」に分かれています。

手間の多い入退社手続きを、できる限りシンプルにしようということで議論されているのが、社会保険・税手続のワンストップサービス化です。これまでは提出先が分かれていた社会保険や税金に関する届け出の入力を一ヵ所に集約することで、企業担当者の事務負担を軽減できます。

「マイナポータルを通じたオンライン・ワンストップ化」は2020年11月頃から、「クラウドを活用した提出の実現」は2020年度後半以降から順次開始するとしています。

法人設立手続のオンライン・ワンストップ化

2020年度には法人設立の負担を軽くなります。

法人設立手続のオンライン・ワンストップ化では、「オンラインによる法人設立登記の24時間以内の処理の実現」を目指しており、2020年度中に実現予定している、登記も含めた法人設立手続のオンライン・ワンストップ化までに法整備等を進めていく予定になっています。

また、登記事項証明書の添付の手間をなくし、これまでは法務局に出向いて証明書を取得し、書類を複数の窓口に持参しなければならない手間を軽減します。

この法案には当初、法人を設立する際に必要な印鑑の届け出の義務化をなくす案が盛り込まれていましたが、印鑑業界の反発などを受けて見送られました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今後の方向性として、行政手続きはデジタル化の方向で進んでいきます。

また、政府の運営するマイナポータルを、今後は様々な電子申請等のワンストップの窓口にしていくのが、政府の方針です。行政手続をワンストップ化していくということは、e-Govやe-Tax、eLTAXなどのシステムを統合していくことになるはずですが、まだ様々な課題もあり、この先のロードマップについては、今後に注目したいところです。